嬉しい。

俺でそこまで動揺してくれるのが。

「桃奈さん」

「…な、なに」

「好きだよ。本当に。」

「ちょ、まって、れいちゃん!わかった、わかったから!」

暗くて見えないはずなのに、

桃奈さんが真っ赤なのがわかる。

ゆっくり手を伸ばして、

桃奈さんの頬に触れると、

一瞬ビクつくけど、拒まれはしない。

…ほんと、ずるい人。

「いいよ、桃奈さんの整理がつくまでこのままでも。」

「え…」

「まだ色々わからないんですよね?俺のことが俺と同じ意味で好きなのか。遥とのこととか。昔のこと…もあるんだろうし。」

桃奈さんはコクンとうなずく。

「なので、整理がつくまで待ってます。好きじゃないって思ったら遠慮なく断ってください。遥との関係は変わりませんから。でも、俺弟になるつもりはないので油断しないで。」

頬に当てた手で、そのまま桃奈さんの頬を少し撫でると、

桃奈さんの体温がまた上がる…けど、

撫でたその手に手を重ねて少し擦り寄って、

「ありがとう、れいちゃん。…ありがと。」

って小さくつぶやく。

ほんと、ずるい人。

こうして、俺と桃奈さんの、

弟以上恋人未満の関係が始まる。