第2話:将来の夢と受験

 高等部2年生になって、心の余裕が生まれ、私はふと過去を回想する時間ができた。ずっと疑問だったことが浮かび上がってきた。

 「なんでいじめなんてするんだろう」

 人間は、共通の好きなものについて話すときよりも、共通の嫌いなものについて話すときの方が気分が高まるらしい。らしい、と言うのは言葉の通り、どこかの大学教授がそう論文を書き、誰かが読んで、それがテレビで私に伝わっただけなので、らしいとしておく。
 とにかく、私は、いじめとは縁の無い高校2年間を過ごして、なぜこんなにも楽しく過ごす方法があるにも関わらず、特定の誰かを貶める行為に興じてしまう人がいるのかについて考えるようになっていった。
 「人的環境」「物理的環境」「サイコパス」「遺伝性」
 結論として、「育ってきた環境と経過」が起因していると私個人は考えていくようになった。そして、ここで私はこの大学付属の中等部を受験した理由を思い出した。

 「私、子どもに関わる仕事がしたいって言ったから、教育学部があるこの学校に来たんだった」

 ここで将来の夢が決まった。
 人格形成に重要な営為境を与える乳幼児期の子どもの教育に携わり、「いじめなんてしなくても楽しい人生が送れる」ことを伝えよう。

 だが、付属大学に行くには、評点平均は達成しているものの、付属枠で入学するには順位が足りなかった。何より、
 私は勉強が苦手なのだ。
 ということで、3年生の4月には、早々に付属大学へのAO入試に臨むべく、指導を受け始めた。保育検定の受験や、ボランティア活動、専門知識の勉強など、9月の受験に向けて邁進した。
 10月のある日、中休みに教室に先生が来て、「結果見てこい」と言われたときは心臓が止まるかと思った。恐る恐る生徒指導室にあるパソコンを見ると、「合格」の文字。
 狭い生徒指導室では、私を含め、AO入試を受けていた同級生の歓声が部屋の外にまで振動していた。

 私の受験は、一足早く終わりを迎えた。