第一章:高校2年生から大学進学まで

第1話:友達
 最低な高等部1年生、あんなに諦めきっていた高校生活は、ある日、1人の女子に声を掛けられたことで彩を取り戻した。

「何描いてるの?」

 この一言がきっかけだった。彼女は、縦割り班活動の時の空き時間に描いていた絵を見てそう声を掛けてくれた。そこから、共通の趣味を見出し、縦割りの掃除活動でも同じだったこともあり、交流は深まっていった。また、高等部2年生になると、彼女から伝う糸をたどるように、私は彼女伝手に新たな人々と出会った。
 彼女の同じ趣味、いわゆるオタク趣味友達、中等部からの友人、はたまた演劇部の個性の殴り合いの面々。私の人間関係は波紋の様に一気に広がっていった。
 今までは、友達と言うものは、共通でしか繋がれないものだろうと思っていた。実際、中等部でのいじめは、ひたすら元友達と同じ思想、嗜好を持つことを求められた。
 懐かしい、「一緒に死のうね」なんて言われたこともあったっけ。
 まあ、もう過去のことだ。少し高等部2年生から3年生の日常場面を綴ってみよう。

 とある昼食休み、教室にて。友達のAは、自分の教室よりこちらの教室の方がいいと、毎回お昼休みにはやってきていた。それなら問題はないのだが……。
「ちょっと、A!なんでお弁当無いの!?」
「お腹すいてない」
「食べなきゃダメでしょう」
「少しでもお腹にいれよう」
Aは夏ごろから食欲がないと言ってお弁当を持ってこない日もでてきた。もちろん、昼食を全く摂らないなんて体に悪い。私はお弁当箱の蓋を出して、ご飯を乗せた。そして、一緒にいた他の友達もひとつずつおかずを乗せていき、いつの間にか一番豪華なお弁当ができあがった。

 とある日の下校時間、玄関にて、先に帰る演劇部の友達Cに、友達Dが唐突に手を伸ばして嘆いた。
「行ってしまわるのですね……」
驚いて振り返る友達A、そして悟ったのか、表情を儚いものに変えて応える。
「止めてくれるな……」
悲しい別れを告げて、友達Aは下校した。
勿論、翌日また普通にあえるんだけどね。

 とある休日、とある横断歩道にて。周りに警戒をしながら友達Eは上げた手を前に突き出した。
「よし、敵はいない!今だ!」
「「「はい!」」」
そして青信号の横断歩道を渡った。

 と、まあ、このように、自由な友人たちに囲まれて残りの高校2年間を過ごした。とても幸せだった。いじめのアンケートにさえ、「私は今幸せです」と書く始末だ。
 本当に幸せだった。