確かにそれは俺も思った。

 たくさん働いたからだろうか、それとも出来立てだからだろうか。

 だが今食べている焼きそばがここまで美味しいのなら、当日売れるのは間違いないだろうと確信できた。

 全員に平等に配られた焼きそばだけでは足りず、俺は朝母さんから受け取ったお弁当を広げる。

 雅也も俺の家を通る前に買ってきたのであろうコンビニの袋を持って来た。

「佐々木くん、新島くん、焼きそばどうだった?」

 いつも聞いている男たちの声とは違う、おしとやかな声が俺たちの名前を呼んだ。

「あぁ、めっちゃ美味しかった」

 そう言った後でようやく相手の顔を認識した。

 目の前にいたのは佐倉(さくら) 雛子(ひなこ)

 高校に入ってから、唯一2年続けて同じクラスになっている女子だ。

 料理の邪魔にならないようにか、鎖骨まである髪を後ろでラフに結ってある。

 普段下ろしている姿しか見たことがなかったせいで、俺は彼女を認識するのが少し遅れた。