知らない声で俺の名前が呼ばれている。

 いや、同じあだ名で呼ばれている人だっているはずだ。

 なのに俺は、その声の聞こえた方を向いてしまった。

「ひ、久しぶり。あの、私のこと、覚えてる?」

 俺とそんなに歳の変わらなさそうな女子。

 茶色く綺麗な目が真っ直ぐに俺のことを見つめていて、彼女の言う「こうちゃん」という人物が間違いなく俺だということをものがたっていた。

 もしかしたら昔同じクラスになった子とかかもしれないが、申し訳ないことに覚えていない。

「ごめん、誰?」

 素っ気ない返事になってしまったが口から出てしまった言葉をもう一度やり直すことはできない。

「え、あー……」

 そんなに俺の言い方に傷ついたのか、彼女は口ごもってしまった。

「おーい、こーすけー?」

 裕貴の声が聞こえる。

 これ以上待たせると目当てのバンドの演奏が見られなくなってしまう。

「えーっと、ごめん、行くね?」