「あのさ!一緒に見学行かない?」
「え?」
「今から陸上部の見学行くんだけど、一緒に行こうよ!」
何言ってるの。この子…。
意味が分からない。
私の話ちゃんと聞いてた?
私はもう…走れないんだけど…。
「風夏ちゃん、ごめん。私もう…。」
「行くよ〜!」
「は…?」
手をひかれるがままに歩く。
ただ振り払えばいいだけなのにどうして…。
どうして私にはそれができないんだろう。
ただ、少しだけ。
ほんの少しだけ、思い出したから。
あの時の風…。
あの時、頬に…身体全身で感じた風、そして匂いを…。
確かあの日も…。
