「怖くないよ。」
もう一度視線が重なる。
「駿くんは、自分で思っている以上に、ちゃんと人と関われてるよ。私、知ってる。」
駿くんの瞳に私が映る。
「ちゃんとみんなの意見聞けてるし、それをしっかり尊重してくれてる。自分の思いよりも、みんなの気持ちを大切にしてる。ちゃんと、関われてる。でもね…。」
5月半ばの夜は、まだ少し肌寒い。
緑の葉っぱがカサカサと風に揺れている。
「もっと、自分を出していいと思う。」
これが、一番伝えたかったこと。
もっと我儘を言って欲しい。
もっとぶつかっていって欲しい。
先輩にも。
同級生にも。
自分自身にも。
「陸上に遠慮なんていらないと思う。」
譲るのは、優しさじゃないと思うから。
