「それでも、陸上してる時はさ。走ってる時は何でも忘れられるんだ。自分の中の闘いだから。集中していれば、周りなんて気にならないし、自分のことだけ考えてられるしね。だから、好きなんだ。走ってるのは。」
自分の中の闘いか…。
「でも、最近気づいたんだ。陸上って、個人種目だって思ってたけど、一人でするものじゃないって。一人じゃできないって。そう思ったら、今まで通りに体が動かなくって。なんか、自分の体じゃないみたいなんだ。今までどうやって走ってたか分からなくなってた。」
そう言った駿くんの横顔は、とても寂しそうで…。
言葉を掛けたいのに、何も掛ける言葉が出てこなかった。
思い出すのは、紅白戦での駿くんの走り。
バトンパスは綺麗とは言えなかったけど、何とかなってた。
それからの走りだって、たくましくて力強いものだった。
でも…。
コーナーに入って晴也さんとの距離が近くなったその瞬間…。
譲ってしまった。
