こんなにスタスタと歩いたのなんて、本当に久しぶりで。
いつもは感ることのないこの感覚に、あの時を思い出す。

あぁ、風ってこんなにも心地いいものだったんだと。
忘れかけていた感覚を取り戻すかのように。


『なつかしい』
その五文字が、何の抵抗もなく私の全てを包む。
私、やっぱり好きなんだな、と考える余裕すら与えない程に…。


「早織(さおり)さ〜んっ!」


「あー!風ちゃん、来てくれたん!もう入部決めた?」


「もちろんですよ!最初っからそのつもりだったんで。これからよろしくお願いします♪︎」


「うわ〜!ほんま!?めっちゃうれしい〜!これからよろしくな〜!で、横の子も入部希望の子?」


『早織さん』と呼ばれた人の視線が私に向く。

短くボーイッシュな髪型に、すらりとのびた手足。身長は170センチぐらいといったところ。ぱっちりと開いた大きな目に、長くのびるまつ毛。微笑んだその顔は、女の私でさえも、心を惹かれた。それに加え、このギャップのある関西弁。