飯田真里(いいだまり)の朝はとても早い。今日も四時頃に目を覚ます。普通の十九歳ならばこの時間に起きる人は少ないだろう。

「おはよ〜!エル!」

あくびをしながら真里はアメリカン・コッカー・スパニエルのエルの頭を撫でる。エルは真里の愛犬で、真里の心を支えてくれる大切なパートナーだ。

「着替えて散歩に行かなきゃね」

可愛らしくも動きやすいデザインの服に真里は素早く着替える。この服が真里の仕事着だ。

「行こう!」

エルに首輪とリードをつけ、真里は部屋の外に出る。真里は職場の社宅のような場所に住んでいる。真里が外に出た刹那、隣の部屋のドアも開いた。

「真里ちゃん、おっはよ〜!今日も頑張ろうね!」

ふわふわした髪を風に揺らしながら真里より十センチほど背の高い男性がニコリと笑う。その隣にはイングリッシュ・セターが座っていた。

「おはようございます、隆也さん!ジャックくん!」

真里は森隆也(もりたかや)と隆也の愛犬のジャックに声をかける。隆也はニコリと笑って真里の頭を手を置く。そして優しくその手を動かした。