「目閉じてたら?」
「閉じても痛いのは変わりません」
「刺すよ〜」
スッと針が入ると管から血が見えて
気持ち悪くなる。
「情けないなぁ」
ケラケラ笑ってる持田先生。
笑い事じゃないんだよ。
「そんなにムスッとしてると患者さんに怖がられるよ」
「患者の前ではしません」
ガーゼの上から圧迫しながら
ムスッとしてると
「何してんだ?」
後ろから新島先生の声がして振り返った。
「お疲れ様です」
「あー採血か。なんか人いっぱいいると思ったら、院長もいるし」
「父さんに捕まったんです…」
「また逃げたのか」
また……って、確かにそうだけど。
「多分一生このままじゃない?」
郁人に言われて
「そんな事ないし!多分来年くらいになれば……」
否定は出来ないけど、否定しておいた。
「それ小さい時から聞いてる」
「子供の頃から変わらないからな」
父さんまで……
「もう僕も追いかけっことかキツい歳だから本当逃げないで欲しいな。倒れて運ばれるのはもう今後は無しで頼むよ」
持田先生も…
僕はしばらくの間は逃げ出すだろう。
でも、前よりは。
今までは、生きている事に罪悪感を感じていて
逃げていたりもしたから。
これからは少しずつ、頑張っていこうと思う。
この人達に囲まれているうちは多分
頑張れる気がする。
END
