私は まだ 割り切れていなかった。

博幸を 信用しないわけじゃないけど。

自分の両親に 報告できないし。


でも 博幸は 積極的に 話しを進めていた。

何度か 弁護士の所に 足を運び。


「雪穂。やっと書類ができたよ。」

博幸は 厚い書類のコピーを 差し出す。

「見ていいの?」

開く前に 私が聞くと 博幸は笑顔で頷いた。


以前 弁護士が言っていたことが

細かく 記された書類の最後に

奥さんの名前と 印鑑が押された書類。


何度も 慎重に 読んだけど。

博幸にとって 不利なことは

一つもない 内容だった。


「待たせて ごめんね。雪穂。これは 実質 離婚と同じだから。それで 今度の休み 一緒に 弁護士の所に 行こう。雪穂との書類も 作ってもらったから。雪穂に サインしてほしいんだ。」

私は じっと博幸を見つめる。


心にある 小さな迷い。


でも 私は この人と離れられるのか。


黙ったままの私を 博幸は 不安そうに 見つめる。



父の顔。母の顔。友達の顔。小林君の顔。

次々に 私の心に 浮かんでは消えて行く顔…


12月にしては 暖かい夜。

博幸が 家を出て 半年が 過ぎていた。