「ねぇ 小林君。小林君は どういう風に 聞いているの?支店長のこと。どうして相手が 私だってわかったの?」

「オーナーから。娘の亭主に 若い愛人ができて。娘と孫が 帰って来たって聞いて。俺 大変ですねって 言ったんだ。そしたら オーナーに 娘の亭主は あんたの会社の人だって言われて。たまたま 部屋に転がっていた 子供のボールに ” たどころ けん ” って 名前が書いてあってさ。俺 聞いちゃったんだよ。娘さんのご主人って 田所支店長ですかって。」


私は 小林君の話しを聞きながら 無性に 腹が立った。

自分達で 娘の家族を 壊したくせに。

博幸だけを 悪者にする 奥さんの親に。


私が 黙っていると 小林君は 続けた。


「オーナーが 支店長の愛人は 同じ職場の女の子だって言うから。俺 すぐに 戸村だってわかった。戸村 彼氏 いないって言ってたから。どんどん綺麗に なっていくのに。言えない奴と 付き合っていたんだよな?」

「小林君は そのオーナーの話ししか 聞いてないから。わからないと思うけど。田所支店長は 今 弁護士を挟んで 離婚の話し合いを しているの。」

「知っているよ。オーナーは 絶対に 離婚届には 判を押させないって 言っていたよ。戸村 どれだけ待っても 無理だよ。やっぱり 夫婦には 勝てないんだよ。」


私は 小林君の言葉に とても傷付いていた。


わかっていたことだけど。

わかっていて はじめたことだから。


こういう状態になる前に 別れる覚悟だったはずなのに。



私は いつから 博幸の離婚を 望むようになってしまったの?


「小林君 ゴメン。私 帰るね。」

私は 小林君の気持ちに 何も答えないまま

小林君を 残し 先に 店を出た。