「大丈夫だよ。まだ 誰も知らないから。」

小林君の 決めつけた言い方に

私は 否定する言葉を 言えない。

「小林君 誰に聞いたの?」


「田所支店長の奥さんの実家 俺が担当なんだ。」

私は ハッとして 手で口を覆う。

博幸は 奥さんのことを 

オーナーの娘だって言っていた。


「支店長 もう家を出ているらしいじゃん?」

私は 黙って 頷く。

「奥さんと子供も もう実家に 戻っているよ。」

前から 実家に 入り浸っているって

博幸は 言っていたけど。


「小林君 奥さんって どういう人?」

こんなこと 聞くべきではないけど。

どうしても気になって 聞かずには いられない。

「そんなこと聞いて どうするの?」

小林君の返事に 私は ハッとして俯く。


「戸村。別れろよ。良くないよ。こんなこと。」

小林君の言葉に 私は 顔を上げる。

「……」

私だって わかっている。

わかっているけど。