「おはようございまーす。」

次々と 出勤してくる社員達。

博幸が 入って来た途端に 私は 駆け寄る。


「支店長。どうもすみませんでした。」

何もなかった顔で。

いつもと同じように 明るく。


一瞬 博幸の目に 戸惑いが走る。

「えっ?あぁ。気にしなくていいよ。」

すぐに 私の思惑に気付き 穏やかに笑う。


「戸村さん 覚えてないの?」

「はい。全然…」

「案外 しっかりと 階段登っていたよ?俺 戸村さんが 部屋に入るの 見てから タクシー出したんだけど。」

「私 鍵開けた記憶もない…」

私達の会話を 他の社員が 笑って聞いている。


「戸村ちゃん 気が抜けたんじゃない?今月 頑張ったもんね。」

西田さんが 優しく言ってくれる。

「しばらく お酒 控えます。」

私が シュンとして言うと

「その方がいいね。若い女の子だから。」

と博幸は 当たり前のように 言った。


そこに つけ込んだくせに…

そんな思いを込めて 博幸を見ると

私にだけわかる 甘い目で 頷いてくれた。