背筋を嫌な冷や汗がつたっていく。

そりゃそうだ。

一年も行方不明なんて、生きている確率の方が圧倒的に低い。

けど、心の中ではどこか望んでいたんだと思う。

あの笑顔をもう一度見られることを。

水元さんは、苦笑を浮かべて頰をかいた。

じゃあ目の前にいる彼女は、やっぱり幽霊ということか。

「水元さんはさ、
もしかして誰かに殺されたの…?」

誰にも恨まれなさそうな彼女に限って、それはなさそうだが…。

しかし、彼女は少し俯いて、こくっと頷いた。

「という事は、犯人を僕に見つけて欲しいっていう事?」

それしかない。

だって、自分を殺した犯人だ。

捕まっていないと納得がいかないだろう。

が、彼女は目を細め、渋い顔をして右にこくっと首を傾けた。

「え、じゃあ、遺体を見つけて欲しいとか…?」

やっぱちゃんと供養して欲しいものなのだろう。

水元さんの家族だって、このまま遺体すら帰ってこないのは辛いだろうし。

しかし彼女はまだ渋い顔のまま、今度は左に首を傾けた。

「えぇ…。」

これも違うのか。

一体何を望んでいるんだ、水元さんは。

しばらく悩んでいると、
彼女は突然立ち上がった。

そして、バイバイ、と手を振った。

「え、ちょっと…!」

静止するも虚しく、
またもや彼女は消えていった。