数ヶ月ぶりに入る、自分の部屋。

きっと母さんが掃除してくれていたのだろう。

ホコリなどは無く、冷房もちゃんと効いていた。

僕は押し入れから高校の時の卒業アルバムを取り出した。

高校二年生の時に行った、修学旅行のページ。

初めて行った東京は、想像していたよりも人もビルも多く驚いたな。

そこにあるのは、この卒業アルバムで唯一彼女の写る写真。

笑顔で友達と大きなわたあめを持って写っている姿は、先程見た水元さんの姿となんら変わりない。

どういう事だろう、まさか…

「幽霊…」

いや、僕は物心ついた時から幽霊というものは見た事がない。

そんな霊感がない僕が、今更幽霊なんて見るはずがない、と信じたい。

きっと、あれは幻覚だったんだ。

「奏ー、ご飯出来たよー」

下から母さんの声。

そうだ、あれは幻覚だ。

だって水元さんは、まだ見つかっていないんだから。

「はーい、今行くー」

そう結論付けて、
ご飯の待っている下へと急いだ。