「起きなさい!!」
一戸建ての二階、階段を上がり突き当たりにある私の部屋へ母親がノックもせず勢いよく扉を開け叫ぶ。閉じていた目をゆっくり開き、目の前にドンドンとわざとらしく足音をたてて迫る母親の顔を確認する。そしてもう一度。
「起きなさい!!」
「起きてるよ」
そういう私の声は聞かず、寝相で偏ってはいるがかろうじてお腹のあたりに巻きついている掛け布団を無理矢理剥ぎ取る母。そういうところが嫌いだ。
枕元に置いてあるスマホを手に取り、ロック画面の『7:30』の表記が目に入る。昨日の晩、寝る前に設定したアラームが鳴るまであと15分。まだ眠れたじゃないか。
私の足元に岩の形をしてまとめられた掛け布団を手に取り首まで被せたあと、私はもう一度目を閉じた。あと15分。それを横目に、舌打ちしながら部屋から出て行く母親。
「ドア閉めて!」
部屋中に響き渡る私の声に母親は返事をすることもなく、3〜4歩進んだであろう廊下を引き返して私の扉を大きく音を立てて閉めた。その後母親が階段を降りてリビングへの扉が開閉する音が微かに聞こえてくる。そしてそのまま私も眠りについた。