「ねぇ。そろそろさ、その瀧さんっていうの
辞めない?」

亜妃「えっ…」

苗字で呼ばれるのはどうも仕事っぽくて、
堅苦しくて嫌なんだよな。
そう思って言ったが、そんなに困ることか?

「…俺の下の名前、知ってる?」

亜妃「か…かずや…さん?」

よしよし、知ってるじゃねぇーか。
だったら問題ないな。

「…正解。じゃ次からはそれね。
苗字で呼んだらやり直させるから。
あ、でも病院ではちゃんと"先生"って呼べな?」

田中みたいな看護師に変に勘ぐられても困るしな…

亜妃「…え、や。む…むりですよ…そんな。」

「何で?」

聞いても答えは返ってこない。
…別に名前で呼ぶくらい普通だろ。

「呼んでみ?」

亜妃「っ…も、もう寝るんで!
お、おやすみなさい」

…相変わらずいちいち可愛いな、こいつ。

「まぁ、いいや。おやすみ、亜妃」

そう言って寝る。

時々目が覚めて亜妃を見るが、規則的な寝息をたてて、
眠れているようで安心する。