挿管をして酸素の数値が落ち着いた頃。
慶太に話しかけられる。

慶太「何でここまでの発散が…?
今日突然ってわけじゃないだろ。
何かしらの予兆はあったはずだが?」

「…あぁ。」

慶太「あぁ、って。お前…付き合ってんじゃないの?
あんなに痩せてるし…気づかなかったのか?」

「あぁ…」

慶太「お前さ、何のために医者やってんだよ。」

「……。」

何も言えない。
何故こんな事になったのか全く分からない。

確かに最近は仕事とか見合いでバタバタしていて
亜妃とまともに顔を合わせた記憶がない。

昨日、朝ごはん一緒に食べたが気づかなかった。
本当に情けない…。

慶太「とにかく今日は帰れ。」

「いや、大丈夫。もう少しここにいる。」

慶太「……。じゃ、なんかあれば呼んでくれ」

そう言って慶太が出て行く。
慶太が出て行き、口に管を入れて、
機械に繋がれた亜妃を見る。

その様子が弟と重なる…蘇る昔の記憶。

…俺はまた同じ過ちを犯すのか。

どうして亜妃がこんなにも痩せてしまっているのか。
ここ最近の亜妃の事を思い出そうとしても
何も思い出せない。
…何をやってるんだ、俺は。

募る苛立ちと絶望。

「亜妃…」

呼びかけてみても反応は全くなく、
心電図モニターの機械音だけが、かろうじで
生きているという事を証明してくれていた。

何もわからないまま、亜妃の状況も
変わらないまま朝を迎える。
亜妃をほっとけないが、仕事には行かないと…
そのままの格好で仕事するわけにもいかないので、
一度家に帰りシャワーを浴びて着替えて出勤する。