夏樹の匂いがして落ち着く。
おばさんの優しい笑顔を見た時から泣きそうになって
溜めこんでた涙がいま溢れ出す。
ーーなんで泣いてんだろう。
泣くことなにもないのに。
「やっぱりいたか」
夏樹の声が聞こえ、頭まですっぽりに布団に隠す。
俺の枕にシミ残すなよ、と泣いてることを見透かすような言葉。
「泣いてなんかないし!眠たくなったから寝てるだけ!」
「あっそ。待ってろって言ったのになんで帰るんだよバカ」
「あたし、バカって名前じゃない」
「バカだろ。バーカ」
黙って聞いてりゃバカ率の高さ。
「バカバカうるさいんだよ!」
殴ってやろうと、起き上がり布団から顔と手を出したら
そのまま両手首を掴まれて。
「…っ」
夏樹の息が息がかかるぐらい、近い。
走って追いかけてきたのか息が上がっていてシャツ越しに心臓が早い。

