心を落ち着かせて扉を開いた。


 入ってすぐ、キッチンにいる雅暉さんと目が合った。


 準備をしていたとは言え、いきなり雅暉さんに会うとは思いもしなかった。


「あ・・・・・・」


「苗ちゃん。おはよう」


「っ・・・・・・。お、おはようございますっ・・・!」


 笑顔はいつもよりぎこちなかった気がした。


 自分もちゃんと笑えていた自信がない。


 声が震えそうになるのを必死に抑えた。


 ダメだ。


 まだ一瞬で好きだと思わされる。


 私はそれだけ告げ、奥にいる空さんにも挨拶をした。


 更衣室にある鏡で自分の顔を見ると、ちっとも可愛くなかった。


 うまく笑えていない。