「苗、あとでよりみち行かない? せっかくここまで来たし、朝と昼兼ねてあのフレンチトースト食べたい」
『あのフレンチトースト』は、私の家の近所にある行きつけのカフェ、「よりみち」の名物の甘くておいしいフレンチトーストだ。
前に一回、たまたまよりみちを訪れた大和くんと出会った時に一緒に食べた。
「行く!!」
私は即答した。
私と大和くんの共通点は甘党というところだった。
大和くんは、大学の近くに一人暮らししているのに、一時間かけて私の地元まで電車で来てフレンチトーストを食べるくらいの甘党だ。
大和くんは、私が服を着替えて軽くメイクをし終わるまで待っていてくれた。
私はノースリーブのワンピースを着て、薄手のカーディガンを羽織った。
メイクもいつもより簡単に済ませた。
昨日たくさん泣いたせいで、アイメイクがうまく乗らなかった。
10時になって、私たちは家を出た。
お母さんは明日帰ることになっているので、大和くんが泊まっていたことにはきっと気が付かないだろう。


