世界は未知のウイルスとの戦いを余儀なくされた。

 ソイツは元をたどれば、その辺にいる何でもない菌だった。食物連鎖の頂点にいる人間はその菌を大量に摂取する。最初は風邪のような症状が現れ、それが一週間。突然、高熱が襲いかかる。抵抗力のない者は亡くなってしまう。

 当初、都市封鎖で感染を防ごうとした国があった。でも、このウイルスは並の物ではなかった。人間という生物のことをよく理解している。軽症の感染者をより多く発生させたのだ。無症状感染者と言われる保菌者。
 このウイルスは、まるでタンポポが種を飛ばすように自身を撒き散らすことに成功した。
 重篤な者は病院送りとなるために感染者はそれほど増えないが、軽症者は都市を越え移動するため、至るところにウイルスをばらまく。次々と軽症者を作る。

 「してはダメ」と言われると、「したくなる」のが、人間という生き物。人目を忍んで、移動する。だから完全に封鎖できない。感染も拡大する。

 やがて、世界でパンデミックが発生。社会を恐怖に陥れた。

 このウイルスに対抗できるワクチン、特効薬はない。

 特徴は感染者が高齢者の場合、重篤となる。亡くなるのは高齢者が多く、子供は比較的、重篤化しない。でも保菌者と成りうる。接触した多くの人を感染するのだ。

 このウイルスには絶対に感染してはいけない。

 その影は黙って忍び寄る。人間の目で見ることのできないウイルスなんて、防ぎようがない。今は感染していなくても、一秒後には感染しているかもしれない。
 今日も明日も明後日も感染者は増えていく。いったい、いつになればこのウイルスと共存できるのだろう。

 高度成長期にこの星の環境を破壊した高齢者。今、そのツケを払う時がきた。未来ある若者の命を奪わないということはきっとそうだ。
 この星からのメッセージ。
 環境破壊をすればするほど、その牙はのど元に食らいつく。やがて、肺に到達し、肺炎を起こす。死に神が枕元に立つ。

 見えない殺人者を止めることは不可能。
 だから、共存するのだ。抗体さえ、できればこのウイルスを恐れることはない。感染を止めるにはこれしかないが、感染する以外に抗体を作る方法がないのは、頭が痛い。
 死と隣り合わせのギャンブルとなる恐れがある。治療薬がないので、広域でできないんだ。そんなことをすれば、ウイルスの思うつぼだ。

 目に見えないウイルスとの戦いは、人間が生活する上で避けることはできない問題。
 先人達は知恵を働かせ、多くの命を代償に勝利を勝ち取った。
 ネズミを運び屋とするウイルス、蚊によって感染するウイルス。種類は違えども、人間の知恵でウイルスに勝てる。
 科学者は寝る時間を削り、研究に没頭していることだろう。頭が下がる。

 今、我々にできるのは感染を拡大させないこと。

 ガマンと辛抱が必要なのだ。各自で、できることをしよう。自分の命、愛する家族のために協力できることは何かしらあるハズだ。

 咳エチケット、不要不急な外出を控える、うがい、手洗い。
 簡単なことから始めよう。習慣付けることが重要なのだ。

 私はかつて、大きな生物が滅んだのを目撃した。たしか・・・恐竜といったかな。あの時と違い、人間は全滅しないで欲しい。環境破壊も止めて欲しい。太陽の当たらない半球でいつも泣いている。君(地球)は日々、傷ついている。見ていられないんだ。僕の姿も人間にはウサギが餅をついているイメージしかないだろう。

 遥か上空の、まださらに上、真っ暗な宇宙から僕は見ている。いつも言ってあげているんだ。
 「ほら、君の側にウイルスがいるよ。気をつけて」
 いつか、届いて欲しい。手遅れにならないようにね。