壊せない距離

2月にしなければいけなかった来年度の予算編成も四半期決算も無事に終わった。

そして3月になり、私はほとんど同僚のサポートをするだけでメインの役割は振られなかった。
それのおかげで残業もほとんどなく、引っ越しの荷造りも確実に進められている。

同僚に気づかれないか心配だったけれど、部長に「最後まで誰にも伝えないでください」と言っていたから、上手く采配してくれていた。

部長は「送別会くらいさせてやれよ」と言ってくれたけれど、私の身勝手な想いで退職するのに送り出されるのは、罪悪感が残りそうだったから、丁重にお断りした。

おかげで私の出勤は明日を残すだけ。

もう全て荷造りをしてしまっているから生活できないため、明日の最後の出勤が終えたあとは実家に帰ることにした。

親には単なる帰省と言ってある。今はまだ本当のことを伝えていない。

親から蒼に伝わることが一番あり得そうだったから。


土曜日の朝一番に引っ越し業者が荷物を引き取りに来てくれて、大阪に着くのは日曜日の午後だと言われた。
繁忙期で金額も高かったけれど、その分輸送も普段より多くしているらしく、早めに着くのだそう。

引き取りを見届けたら、そのまま私も大阪に行くつもりだ。ガスの開栓立ち合いなどもしなければいけないし、東京に残る理由もない。

1泊は大阪のホテルに泊まって、日曜日は必要なものを買ったり片づけたりしていたら、あっという間だろう。

つまり、私に東京で残された時間は土曜日の、出発まで。

飛行機の時間を夜にしたのは、蒼に会う時間を作りたかったから。

明後日でお別れだよ、蒼。