「「「かんぱーい!」」」

明日から3連休という金曜日の夜、本社がある主要駅からすぐの居酒屋で同期会が開かれた。
今日参加できたのは15人と、まあまあな集まり。

各々勝手に話したい人と話す、気楽な飲み会だから楽しく過ごせる。

私と凛は出口から正反対の、座敷の奥で静かに飲んでいた。
近くの席には、営業部の堀田くんに鈴原、美波、凛が座っていた。

「ちょっと鈴原、幹事なんだから向こうで注文係やってきなさいよ。」
「やだよ、もともと幹事じゃなかったはずなのに、誰かさんに押し付けられてやってただけだし。店の予約と連絡、それに乾杯が終わったら俺の仕事は終わりだよ。」

嫌味そうにこちらを見てくる鈴原を無視して、ピーチフィズを口にした。

「どうせ鈴原のことだから、また領収書遅れたんだろ。それで水瀬に助けられたってところか。」

堀田君が事の真相を、見ていないけれど分かったように説明してくれる。

「しょうがないだろ、先月は出張続きでなかなか本社にいなかったんだから。経理部はそういうところも理解してくれないからなあ」

「あらそう。それなら出張費は自腹切ったらいいんじゃない?そうすれば経理部に来なくて済むだろうし。堀田君みたいに遅れずに出してくれる人はいつでも歓迎だけど。」
「あーすみません申し訳ありません、また次からもお願いします。」
「ほんと、葵は鈴原に甘いよねえ。」
「ちょっと凛、甘いって別にそんなことはないんだけど。」
「ぜんぜん甘やかされてないから。それに、俺じゃないだろ。水瀬が甘やかしてんのは。」

その言葉に、周囲にいた同期全員が一人を見つめた。