「葵、大丈夫か!?」

そう言って駆け寄ってきてくれた蒼に驚いて、泣きそうになっていた気持ちも自然と消えていた。

「う、うん。足ひねっただけだから。」
「良かった。俺がおぶっていくから、乗って。」

私の前でしゃがみ、背を向けている。

「え、い、良いよ、重いし!」
「良いから、早く。」

掌をひょいひょい、と降って早く乗るように急かしてくる。

「…ありがとう。」

お父さんみたいに大きくはないけれど、蒼の背中も、私の知っている頃よりは大きくなっている。

同じ5年生だっていうのに、蒼はどんどん大きくなった。私はまだ全然身長が伸びないのに、蒼は私を置いていくように大きくなっていく。

普通、小学生の頃は女子の方が成長が早いって保健の先生が言ってたのに。


「ねえ、何で蒼が来てくれたの?」

蒼の背中で小さく揺られながら、蒼に問いかけた。

「吉川がゴールに来て先生に言ってるのが聞こえたから。葵が歩けなくなってるって。」

紗季ちゃん、無事にゴール出来たんだ。良かった。
だけど、それなら、先生が来てくれていたはずなのに。

「で、でも、先生が来てくれるはずじゃ…」

その問いも、蒼に簡単に返された。



「葵を助けられるのは、俺だけだから。」

「…あ、ありがと。」


多分、その時。蒼のことをかっこよく、たくましく、そして好きだと思ったのは。