「ミウさん!
今度、絶対に謙人さんと食事に行くセッティングを僕がしますので、今日は僕に付き合ってもらえますか?」
ミウはとてもいい子だった。
健太郎の熱意を素直に受け入れてくれる。
「それで、私に何の用事ですか?」
健太郎はこの時初めてミウの人柄を認識できた。
薄暗いショットバーのほのかな照明の中、彼女の瞳はまだ汚れを知らない。
健太郎はミウがベトナム出身だということを確信して、さりげなくベトナム語で自己紹介をし始める。
「僕は明智健太郎といいます。
幼い頃に一緒に過ごした友人を捜しています。
僕は小学生の頃、父親の転勤でハノイで暮らしていました。
その時に家族で親しくしていた親子がいました。
そのお母さんは早くに亡くなってしまったのですが、その娘は日本にいるそうです。
その子の本名はロビン・ファム
通名は西園寺えりか」
ミウは驚いたように右手を口に当てている。
その仕草は、私は何も話せないと訴えていた。
大きな目で健太郎を見たまま何も反応しないミウを、健太郎はジッと見つめた。
「ロビンは今どこにいるのかな?
僕は決して怪しい者ではないんだ。
それは、君が直接ロビンに聞いてくれれば分かると思う…」



