次の日、私たちの間におこったことを中庭でお弁当を食べながら亜紀に報告した。

亜紀は驚いたり、やっぱり、と納得したり、時に涙ぐみながら話を聞いてくれたが、一言も私を責めなかった。
そのことが嬉しくもあり正直心苦しかった。

「唯とのことも、時が解決してくれると思うで。…しかし、唯が達也のことを好きじゃったんやこ、わからんかったな。」
両手を上げて伸びをしながら亜紀がつぶやく。

「うん。」
中庭のベンチに座っていると生ぬるい風が髪の毛をサラサラと揺らした。
ふと髪の毛が伸びた私に、可愛いと言ってくれた達也くんの笑顔が頭をよぎる。

もうあんな風に達也くんと過ごすことは無いんだ。
もう唯と亜紀と三人でワイワイ過ごすことも無いんだ。

そう思うと自分のしたことの罪を改めて感じていた。



私たちが別れたことはしばらくして噂されていることを感じたが、多分達也くんのおかげだと思うけど、私が誰かから責められることも無かったし、好奇の目を向けられることも無かった。


七月初め、学級委員会に向かう途中に永井くんに
「夏大、応援来てくれる?俺な、今年はレギュラー取ったけん」
とさりげなく誘われた。

永井くんはあの後調理室でのこともたずねられていないし、達也くんと別れたことも知っているはずなのに何も言われていない。

私は返事を持て余し苦笑いを浮かべた。

それでも何か言わないといけないと思い
「レギュラーおめでとう!頑張ってね!!」
そう言うのがやっとだった。


結局、私は応援に行くことができなかった。

その夏、永井くん達野球部は2回戦で破れてしまった。



私の時間はこの夏で止まってしまったようで…




達也くんとも、唯とも、永井くんともぎこちないまま卒業を迎えた。