ホームルームでは新しいクラスでの役員を決めることになった。
三年となると役員などしたがる人は少ない。進学コースだから皆受験のことが頭にあり、そんな余裕が無いのだ。

「誰かおらんか?役員してくれる言う奴は」
担任の先生がため息混じりで名簿に目をやりながら言う。

もちろん皆黙ったまま…。

パシッ!

先生は音をたてて名簿を机に置き不機嫌そうに生徒をながめたかと思うと

「もうこうなったら指名させてもらうぞ。」

そう言い
「だ・れ・に・し・よ・う・か・な…」
名簿を指で差しながらなぞっていく。

「…よし!学級委員長は永井!副委員長は…後藤!皆異論はないな?!」

(…え?!)
頭が真っ白になった。
性格的にも周囲の評価的にもそんな重大な役が私に決まることなど今までに一度も無かった。ましてや相手が…永井くんだなんて…

「そんな!」
ただただ驚いている私の代わりに亜紀が抗議をしようと口を開く。

「何なら~本岡、やりたかったんか?まぁ、安心せえ。お前には体育委員やってもらうけぇ。」
先生はニヤニヤしながら次々に役員を指名してさっさとホームルームを終わらせ教室を後にしていった。

おこったことが信じられず口をパクパクさせていた私のところに亜紀がかけよってきてくれた。

「あのクソおやじ!みぃ~大丈夫?」
亜紀が抱きしめながら心配そうに声をかけてくれる。

「何か…こういうことになってしもぉたけぇ…よろしく」
永井くんも近くに来てくれて頭をかきながらそう言ってくれた。

「迷惑…かけるかもしれんけど…よろしく」
やっとの思いでそう言った。

波乱の新学期の幕開けだった。