6時50分 もうすぐ永井くんが来てしまう。
あわてて玄関に行き、スニーカーを履く。
下駄箱に付いている姿見で姿を確認した。
そこには少し緊張した青白い自分の顔が写っていた。

「こんなんじゃ永井くんに心配かけてしまう…」両頬を軽く叩いて気合いを入れる。

チームの保護者会Tシャツにジーンズ。首には応援タオル。 いつもの格好なんだけど、色気も可愛げも無い。試合なんだから仕方ないけど…前髪をスッと直す。


今日は昨日の返事をするんだ…。
永井くんの告白は少し戸惑ってしまったけどとても嬉しかった。

私もちゃんと勇気を出して返事をしようと思う。正直な自分の気持ちを…。

「よし!」

気合いを入れて玄関から出て鍵をかけ、振り向く。

そこには昨日とは違う白のSUVカーが停まっていた。
運転席から出てきたのはキャップをかぶって白Tシャツにジーンズ姿の永井くんだった。

思わず見とれてしまう。

「…おはよう。後藤さん?」

ボーッとしてしまっていた私の顔を覗き込み声をかける永井くんにドキッとした。

「ごめんなさい。昨日と車が違うけんびっくりして…」

「ハハハ、昨日のは仕事先の車じゃけぇ。店の名前入っとったじゃろ。さ、乗って乗って!汚い車じゃけど」

永井くんが背中をそっと押して助手席を開けてくれた。

「おっ、おじゃまします。」
どもってしまい、この先が思いやられる。

「じゃあ、行きますか!」
笑顔でそう言いハンドルを握る永井くんは目眩がするほど格好良かった。

こんな日が来るなんて…
プロポーズも…

嬉しさと感動で胸が締め付けられる。

「…好きです。」

思わず言葉が口をついて出てしまった。
自分でも驚き両手で口をふさいでうつむく。

(なっ…何でこんなこと口走ってしまったんだろ)

カーステレオから爽やかな洋楽が流れていた。