「はぁ……。またか」


お母さんが亡くなった日から、私が見る夢はほとんど暗闇にいる。

たまに家族3人の楽しい記憶も出てくるけど、それもすぐに終わってしまう。



2年前。お母さんは事故で天国に逝ってしまった。
ううん。正確に言えば"事故に見せかけた殺人"。

お母さんを殺した犯人に復讐するため、不良だった私は喧嘩を辞めた。

復讐するまでは拳を握らないと決意した。

いつでも復讐出来るように、温存していないと。


ベッドから体を起こせば、ハンガーに掛けられた赤いコートが見える。

コートを着れば、喧嘩の始まりだった。