嶺亜くんから渡された予備のヘルメットを被る。
ーヴォンッ。
ビクッ!
エンジンの掛かる音が一気に周りに響かせたもんだから、私の肩がビクついた。
でも、なぜかエンジンを付けたままで、一向に発進しない嶺亜くん。
何かあったのか声をかけようとした瞬間。
嶺亜くんが私の手を掴み、自分の腰に手を回した。
自然と前屈みになり、ヘルメット越しに頬が触れる。
「掴まんねぇと死ぬぞ」
あ、私が嶺亜くんに掴まっていなかったから発進しなかったんだ。
中学以来乗ってなかったからすっかり忘れていた。
体が密着しているからか、なんだか顔が熱い。
火照っているのが自分でも分かる。
こういう時、顔全体を隠すヘルメットを被っていて良かったと思った。
ーブオオオオオン。
ようやくバイクを走らせたのはいいんだけど…。
直くんが言ってた通り、とにかく速い!!
速すぎるぅぅぅー!