【side 由乃】



「お母さん、久しぶりだね」


私は、指定された工場へ向かう前にお母さんに会いに来ていた。

お母さんに会いに来るのは命日の時と、お母さんに話したくなる時。


今日はどうしてもお母さんに会いたかった。


「お母さん。私、今日戦ってくる」


敵う相手じゃない。
それでも私は今日、拳を握る。


「ボロボロになっちゃうかもしれないけど、見守ってて。

大丈夫。お母さんが言った事はちゃんと守るから」


お母さんが生きていた頃、私がまだ"血の悪魔"と呼ばれている時だった。





『由乃。よーく聞きなさい』

『しょーもない話だったら怒るよ』

『いーから!』


不良だった私は、反抗期とも言える時期だった。