「大キライ!!」

女の人の声と共に、
“バシッ”という鈍い音がした。

雪で凍ってしまった地面を気にしながら、

あたしはその音がした方へ振り返った。


駅前の時計台のそばから、早足で去っていく女の人。

残されたのはひとりの男の子。

年はあたしと同じ15歳ぐらい?

少し茶色いふわふわとしたネコっ毛に、
赤いマフラーを巻いている。

どうやら彼は、先ほどの女の人に頬を叩かれたらしい。

…今日は2月14日、

ワクワクするはずのこの日に、一体何があったんだろう。


塾が始まる時間も忘れ、あたしは男の子から目が離せなかった。


彼の髪の毛や肩についた白い雪と、
彼の目から流れる大粒の涙がキラキラしている。

人目を気にせずポロポロと涙する彼に、

あたしの心は“トクン”と小さな音を立てた。



(オワリ)