僕たち家族は、一輪の花も含めてここに存在するすべての草花たちに響き渡るように心を込めて歌った。
* * *
「さっ、今日は帰ろうか」
ある程度の時間を過ごした後、僕はそう言った。
「えー、まだいたい」
まだこの場所にいたいと言う、娘と息子。
僕は、そんな娘と息子が愛おしい。
「また来るときの楽しみにとっておこう」
僕がそう言うと……。
「……うん……」
娘と息子はうなずいた。
「じゃあ、またね」
僕がそう言うと娘も……。
「じゃあ、またね」
「じゃあ、またね」
娘の後に息子もそう言った。
妻も「じゃあ、またね」と言って、僕たち家族はこの場所を出ようと歩き出した。
『優くん……』
……え……?
今……確かに『優くん』と聞こえた……。
……あのとき……。
あのとき……20年前と同じだ……。
僕は慌てて振り向いた。
だけどやっぱりそこには一輪の花やたくさんの草花たちが存在するだけ。
……今のも……幻聴……?
「どうしたの?」