「……っ……てなれば、平沢医院長の狙いはあの時からサクラだったワケか。…でもつながらねえ、あよ人も馬鹿じゃないだろ?サクラを探してるなら、何であの世代の子ばかりを狙う必要性が有るんだ?」
「しかも誘拐されてるのは男の子も例外じゃないからな。サクラを探してるのなら、少なくとも身分証等で年齢を確認して同年代の女性をさらえば良いだけの話しだ。ましてや、息子が叫びに来た意味も…」
そうだ。
平沢君がなぜ警察庁入り口で奇声を上げたのか。それすらも私たちを混乱させている大きな理由の一つ。
「警察に親父の犯行を言いたかったとか?大河はどう思う?」
「いや、それは違うと思う。例えば俺がマサキさんの息子なら、政治家や官僚と何かしらの繋がりが有る事を予想して奇声上げるなんて真似はしねえもん。だし、有れ程の病院の院長なんだから、連中が茶飲みに来て息子紹介した事なんて腐るほどあるはずだしな。」
「するならば、所轄に行って守ってくれる事を前提で証拠突き出して……って流れじゃね?」
「なるほど、確かにそうだ。」
また行き詰まった私たちを見た大河ママは静かに、ホットコーヒーを私たちの前に置く。
そして、普段なら絶対にありえないのに──何か考えるよう一瞬目を瞑ってから、言葉を紡ぎ始めた。
「精神科の先生は強く無いと務まらないって同級生に聞いた事が有るの。」
「同級生?」
「ええ、私の友達が昔、婚約破棄が原因で自律神経をやられちゃってね。最終的に平沢医院程の病院じゃないけど、総合病院に隔離されたのよ。」
「まだ彼女が隔離されるほど我を見失っていなかった時に一度、お茶したの。その時に言われた事を今、思い出したわ。」
「❝精神科の先生は自分が強くないとムリなの。先生が病んでたら例え私たちが正常でも鬱病だと簡単に認定されてしまうからね。❞って。」
「…………。それって、お袋、まさか平沢健一も精神的な「もちろん、私は探偵でも刑事でも無いから断定はできないわ。でも、コレが娘を守りたいと云う女の勘であるならば──」
「平澤健一の心の中にはサクラと出会ったあの日の自分と、年を取っていった今の自分、この2人が居るって事も考えられないかな、と思ったのよ。」
「──それなら、確かに辻褄が合う…よな。」
「ああ、由美子の言う通りだ。もし平沢自身が精神的な病に苦しめられているのならば、サクラを探してるんじゃなく、サクラの面影を探してるとも取れるし…サクラが大人になりそして又自分も年を取った事実に気付かないフリ、もしくは完全に気付いて居ないのかもしれない。」
