神埼探偵事務所



居る全員が二十歳を越えていると云うのに、何十粒以上も涙を流したあのシチュエーションは半分カオスにも近かった。

10分ほどすると、流石に全員が少し落ち着きを取り戻す。──事件や事故を聞いたり見たりしている場数が普通の人達よりも遥かに多いからこそ、早く立ち直れるのだろう。一種、それも特技に近い。



「それより親父、あの後何か分かったのか?」


「ああ、全員見てくれ。…とりあえず分かった事が有る。平沢健一はナンバープレートを絶対に変えてないんだ。大河、それがどういう事を表すか分かるか?」

「ナンバープレートは何なんだ?」


そう問いかけた私の父は完全に刑事兼父親の目になっていた。……この時の彼は強い。家族だからこそ、分かる。


「3991。可笑しいだろ?自分や家族の誕生日だから車を乗り換えてもナンバーは変えないって人は多いけど、こんな普通の数字で……しかも一番最初の事件の時に覚えられてる、不気味且つ縁起の悪い数字を付け続けているなんて。」

「ああ、普通なら変えるだろうな。特にこの時代、ナンバーがネットで拡散でもされたら平沢に被害がいくかもしれないのに。」



「そのナンバーに意味が有るとすれば?」


「……大河?意味ってなんだ?」



「いや、まだそこまでは…でも何か意味があるんじゃねえのか?それこそ「ちょっと待って…!」


男3人が資料を真ん中に置き、そそくさと会話を勧めている中で声を上げたのは大河ママでは無く勿論、私だ。


「サクラ?どうした?何か思い当たるのか?」


「思い当たるって云うか……。」




思い当たるとか、かもしれないとか。

そんな次元じゃない気がするんだ。



──私は刑事でも探偵でも無いただのOL。思い出したくも無い過去を持ち、今はそれを全て受け止めた青海サクラと云う女。

でもそんな女の頭の中で……今…全部が繋がった気がした。