神埼探偵事務所



「お前があの時の事を思い出そうが、出さまいが、そんなんどっちでも良かった。」

「ただ俺はお前の側で……サクラの男として、自分の一生かけてお前を守っていきたいって。」



「純粋に愛してるんだよ。」

「こんな感情的になるなんて俺らしくないし、情けないし、それも全部分かってる。でもそれ位同情心とか関係無くお前の事を愛してるんだよ。」



「お前は俺の気持ちなんて知らずに色んな男と付き合ったかもしれない、俺だってそんなお前を見て…自分の悲しさを紛らわす為に色んな女に行ったかもしれない。」


「でも俺が自分の人生の中で唯一、本気で愛して守りたいと思ったのは、サクラ。お前なんだよ。」



自分の両親や私のお父さんが同じ部屋に居ると云う事は、もうきっと気にしていないのだろう。

まるで壊れたかの様に弾丸と自分の思いを私にぶつけた大河は、❝愛してる❞最後にそう呟きながらもう一度、優しく私を抱き締めた。



普段なら気持ち悪さを感じる医薬品の匂いも、大河のシャネルの5番……優しくて…でも色っぽさも感じる香りに包まれて消え去っていく。


ドクドク、と鼓動が響く私達の心臓は、2人の気持ちの高鳴りをよく表しているものだ。





「……サクラ、私たちも黙っててゴメンね。」

抱き締め合う2人を見て、わんわんと子供の様に泣きながら、そう謝罪してきたのは大河ママ。

キレイな顔に涙は似合わない、そう言いかけたと同時に大河パパが彼女の肩を抱く。私のお父さんはと云うと……病室の端の椅子に座って、頭を抱えていた。

肩が揺れているから、どうやら彼も涙を流しているのだろう。この場で冷静なのは大河パパだけかもしれない。

それはさすが、元公安委員会委員長と云う普通では有りえない肩書と経験を持っているだけある。


「ううん、大河ママも……勿論お父さんも……誰一人悪くないから。何で黙ってくれてたのかとか、全部ちゃんと分かってるから。」


「だから、ありがとう。」