神埼探偵事務所

 


「あんたの言い方だと、そう聞こえるって言ってんのよ!確かにあの日の思い出は辛かったかもしれやい!」

「というか、辛かったわよ!だから自分の記憶の中から消したに違いない……でもね、同情心で好きな男の人生奪う様な真似、あたしが望んでると本気で思って…「──ッ、ああ!!しゃらくせえな!」


ほぼ空になっているペットボトルをギュッと握り潰してから、私の目をまっすぐ見つめる大河の薄茶色の瞳は何時もに増して鋭い。


「誰が同情心でお前と一緒に居るだ?」

「誰が、自分の後悔を無かった事にするためにお前を側に置いただ?」



「散々な位に酷い事件を調べて、担当してきた俺がそんな同情心で自分の人生や好きな女を決めると思うか?同情で動くと本気で思ってんのか?」

「散々俺の事サイコパスだの何だの言ってたのは、どこのどいつなんだよ。なあ、サクラ。おめえが一番分かってんじゃねーの?俺は、誰から何て言われようが自分の気持ちに一番まっすぐだって。」


「後悔とか同情とか人の目とか、んなもんどうだっていいんだよ。」



「興味をそそられたから事件を担当するように、お前の事を………青海サクラっつー、俺よりもクールで格好良くて、強がりで、でも本当は誰よりも優しく懐深いお前の事を、最初に会った時から大好きだった。」


「餓鬼の頃は付き合うとか結婚とか、そんなもん辞書になかったけど……それでも、お前が他の男と話してたら腹立ってた。」



「いいか?俺はな、物心ついた時から……留学してた時でさえ……お前を俺のモノにしたかったんだよ。お前には俺だけの女で居て欲しかった。」


「でも誰がそんな事言えるんだよ?あの時に好きな女1人守れなかった様な情けねえ男が、何でお前に好きだの何だの言えるんだよ?」



「だからありとあらゆる捜査資料を読んだし、犯罪心理学や科学も勉強した。全然面白くもねえ事件を担当して、実績も残した。」


「……それは、俺の欲望のためというより……サクラ、お前に認めてもらうためなんだよ。あの時は……あの時はお前を守れなかったけど、今の俺ならお前を守れるって」