久本さんと言えば──この事務所の結構な太客。

"警視庁捜査一課"の一課長だ。




──そう、彼が何故こんな態度と性格であっても探偵として右に出る者は居ない位に稼いでいるのか。


それは……

大河のクライアントは主に国内外問わずに事件を解決したい警察組織の人間や、お金に糸目を付けない秘密結社や裏金の基盤ともなっている怪しい匂いプンプンの国家だから。



「あれ?久本さん?」


「ごめんね、遅くにアポも無しで来ちゃって」

「これを神埼君の所に持ってけって急に上から言われてさ。とりあえず一課に指揮だけ出して、急いで新幹線に乗り込んだ感じだよ。」


言葉の通り、相当急いで来たのだろう。ジャケットの端には少しだけ皺が付いている。

多分、背広を掛ける前に資料を読み込んでいたのかな。それなら、皺が付くのも納得だ。


「最近、警察庁からも海外拠点の秘密結社とか、FBI系列からも何処からも面白い依頼こなくて暇だったんすよね。」


「おー、それなら是非お願いしたいね。今回も相談料、それなりに出せるからさ。」




──初めは警察の面子も有るから、と云う理由で大河の助言が捜査に生かされた事実は隠されていた。


でも大河のパパが彼の凄さを認めたと同時期に、下世話な週刊誌が情報を仕入れ大大的に彼が警察の捜査協力をしていること──


留学先のイギリスで、とある連続殺人の概要をニュースで見た彼が警察に自分の見立てを書き綴った手紙を送り、そのお陰で真犯人が逮捕されたこと──



そんなことまでも…そう、ありとあらゆる事実を書いてしまったせいで神埼大河と云う人物の推理力が全国民にバレてしまったと云うワケだ。



勿論、国民はそんな若者に事件の捜査協力をさせるなんて……と最初は怒っていたし反対も出ていた。



でも人の命を救う事に良いも悪いも無い。

数々の実績を残していく内に、私の幼馴染は全国民から受け入れられ、『実在する工藤新一』や『アジアのシャーロック・ホームズ』と称され今ではファンクラブまでも出来るほどの人気になったのだ。


その人気や実力が海外にも伝わり、正直な話し……ほぼ毎日海外からの電話やメールを受けるし何億、何千万単位の依頼が来る事も確か。


ただ、大河はお金では動かない。

だからこそ、国家や組織までもが素直に大河に頼る事が出来るのだろう。