4月10日、入学式を終えて一週間が経った頃。

見覚えの有る桜並木にはピンクの可愛い花がこれでもかと云う位実っていた。


「ねえ、大河早く帰ろうよ!!」


「やだ。」


「どうして?大河のママが心配しちゃうよ。今日はサクラのママとパパ、会社のお出かけで居ないから大河のお家に帰る日でしょ?」

「でもまだ帰らないから!」



もうクラスが終わって2時間程は経っていた。

6年生達もぞくぞく帰宅していると云うのに、この頃から仲良しだった幼馴染の神埼大河は、友達のシオン君と云う男の子と、ひたすらに鬼ごっこばかりをしていたのだ。


「もーすぐ5時になっちゃうんだよ?」


「うん。」



「暗くなったら皆、心配しちゃうよ?」


「あー!もううるさいな、サクラは!」

小さい頃からイケメンだった大河が、キリッとこちらを睨むと、そんな彼の姿を見てシオン君が笑いながら『それならサクラが1人で帰ればいいじゃん!』と私の背中を押したのだ。


それに対して──何も言ってくれない大河に幼心ながらムカつきを覚え、強がった素振りでランドセルを背負い直し、私は校門へと急いだ。