何だかんだ動き回っていたら、腕時計は既に夕方6時を差していた。


大河は私の事を❝ただお金だけせびりにくる幼馴染❞と思っているのかもしれないけど……

こうやって備品を買いに出たり、溜まりに溜まった洗い物をしたりオフィスの掃除をしたりと、来たら来たで何だかんだ毎回する事が積もっている。


お陰様でほら、汗でアイブロウが取れそうだ。


「じゃあ大河、私帰るからね。」

「おん。」


「煮込みハンバーグとサラダが冷蔵庫に入ってるから適当にチンして食べてよ。後、コーヒー飲んだらせめてカップを水には漬けててよね。じゃないと、洗う時に茶色いのこびりついて大変なんだから…」


「あ、それと!ボールペン無くなったら「お前は俺のお袋かっての。分かったって。」


「もう!何それ!」

口うるさいのは自覚してるけど、言われるのが嫌なら先ず行動を改めてくれっつーの。


「とりあえず6時でタイムカード付けといてやるから、さっさと帰れよ。ただでさえビビリなのにこれ以上暗くなったらどうすんだよ」

「なっ──!別に何時でも1人で帰れるわよ!失礼な!」


キリっと彼を睨みつけるけれど、当の本人は全く気にしてなさそうに澄ました顔で本を読んでいる。


これでブサイクだったら、なに格好付けてんの?って一発位ビンタしてやりたいけれど、本当に男前で英字本が似合うからこそ、余計に腹が立つ。


女っていうのは、我ながら理不尽なものだ。



取れかけたアイブロウを気にしながら、バッグに財布とスマホを入れてオフィスを後にしようとした時……一足先にドアが開いて少しだけ驚く。


「……すみません──というか、サクラちゃんか。」


「──ぁあ!久本さん!」