神埼探偵事務所




「ちょっ、大河…!いきなり走り出して何よ!」


こういう所が❝生意気❞だとか、❝協調性が無い❞だとかでマスメディアに叩かれたり、学生時代にそんなに友達が出来なかった理由だろう。

普段は冷静・クール・俺様なクセに、こうやって何か自分の頭の中で繋がると周りの事なんか一切気にせずに猪突猛進でその輪の中に突っ込んでいくんだ。


20年以上一緒に居る私ですら、そんな彼の性格に未だハテナマークが浮かんだり、納得出来ず小言を言ってしまうのに……

イケメンだからとか、金持ちだからとか、そんな子ども騙しみたいな理由で近づいて来た女の子達とは尽くうまくいかなかったはずだ。

むしろ、昔の女と名乗る子達が週刊誌に大河の性格や付き合っていた時の情報を恨み辛み売り出しても良い位なのに。



はあはあ、と息絶えかけの私を横目に自分のスマホの画面を無邪気な顔で見せてくる神埼大河、26歳。


お前は子どもかっての!なんて云うツッコミを堪えて、彼のスマホに目を向けた。



「……。」


「花びら、だよね?給食袋に入ってた。」



「そう。お前、桜の花びらって何枚か知ってる?」



「桜の花びらぁ?……確か5枚だった───ぁあ!」


アクエリアスを飲もうとした手を止めて、スカイラインが揺れるほど大きな声を出した私。

いつもなら、うるせーんだよ!と言われても可笑しく無い位のボリュームなのに、隣の彼が未だニコニコしているのは大事な何かに気付けたから、だろう。