大河は昔から鬼役ばかりしてくれていた。
私が必死になって体育館の倉庫や、河川敷の下に隠れるんだけど、いつも5分経たない内に見つかるもんだから、その日ばかりは知らない家の倉庫に隠れたのだ。
「まさかの俺もお前が人様の土地の倉庫に隠れてる何で考えもしないで、3時間位探し回ってたわ。」
「うん、見つけてくれたのって確か夕日が落ちかけてたから……18時前とかその位だよね。」
思い出が鮮明に蘇ってくる事に、一種嬉しさと懐かしさを覚えながらそう聞き返すと、隣の大河も柔らかい表情で頷き返してくれた。
「お前、赤ちゃんみたいに目に涙溜めて……『いつもみたいに大河が見つけてくれなかったらどうしようって思ってた』って抱きついてきたんだよ。」
「そんな事まで覚えてたの?」
「おん。──それ以前からお前だけはこの俺が守ってやらないと…って思ってたけど、あの時は鬼の俺は別に何も悪くないのに、すげえ申し訳無い気持ちになって、余計に守ってやろうとか助けてやろうとか、そんな気持ちになったんだよな。」
「へえ……。」
「今思うと、俺はお前に出会った時からお前とこうなる運命だったのかもしれない。」
「───運命、か。」
「おん。クサイ言葉だけど、な。」
「それなら尚更…」
「尚更?」
「桜が満開になる季節までに全部片付けて、二人でゆっくり公園でも散歩したいね。それこそ、小学生の時みたいに、さ。」
ニッコリと笑いながらキレイに話をまとめたつもり……だった。
だけど私の一言が原因で何かに閃いてしまったのだろう。いつかの箱根の朝とは真逆に、今度は大河がロマンティックなムードを全力で壊しにかかってきた。
「桜…サクラ………」
「そうか、それだよ!!!」
