「はあ、もう直ぐで春になるって云うのに何の収穫も無しか…。」
いつもならもっと肌寒い風が私達を襲うけど、今日は時間帯のおかげもあってか、いつもよりポカポカして過ごしやすい。
「そんな事言っても、まだ調べ出して2週間とかそれくらいでしょ。そんなもんだよ。」
「……。だけど俺って天下の神埼大河だからな。」
ははっと乾いた笑いを浮かべた大河の心の中が手に取る様に分かる。俺が捜査協力した以上は、もっとスピード感を持って動いてやらなきゃ、子ども達の無事のためにも。と云う責任感とか重圧とか、そんな物が心の中に渦巻いているんだろう。
無理に何かを言う必要が無い関係性だからこそ、何も発さずに彼の手を握った。
嫌味を言わずに素直に握り返してくる大河の行動が、今の彼のメンタル状況を切に表してくれている。
「あともうちょっとでこの木々も桜になるんだね。」
「だろうなあ。ここを通って通学する子達には……美咲ちゃんみたいな思いしてほしくないなあ。」
「そうだね。…例えばあの子とか?」
話しを変えようと私が指を差した3メートルほど先には、真っ黒のランドセルを背負った男の子が3人。
どうやら帰り道の此処で鬼ごっこをしている様だった。
「アキラが鬼〜!!」
「うるせえ!次はお前だ、健太郎〜!!」
……18年前にこの道で可愛い女の子が失踪した、なんて云う事実はこうやって風化されていくのかな。
と眉毛が下がりそうになった私の頭に置かれる大きな手。ん?と大河を見上げると何かを思い出したかの様にほほえみながら私に問いかける。
「覚えてる?俺達もよくあんな事したよな」
「ははっ、覚えてるよ。でも私と大河の場合は二人で帰る事が多かったから、鬼ごっこと言うよりも隠れんぼのほうが多かったよね?」
「あー、かくれんぼ。よくしたなあ。」
「うん。小学四年生の時に、私が鍵開いてるからって知らない人の住宅地に有る倉庫の中に入って、泣いてたのも覚えてる?」
「はははっ、あん時のお前のアホ面含め忘れるワケねえだろ。」
