「あのッ…大変お聞きしにくい事ではあるんですけど、旦那様から会社の同僚や部下に色盲の人が居るとか、そういった情報は何も聞いていませんか?昔から現在に至る今でも。」
「色盲?あの色盲の事ですか?」
「いいえ、どちらかと云うと主人は広告系の会社に勤めて長いので色盲の人は……働きにくい環境だと思いますよ。」
「なるほど、分かりました。」
──となると、引っかかるのはセンチュリー、かな。昔の捜査資料を見てもこの近所に住む人達には怪しい人は居なかった、となっている。
会社に色盲の人も居ないとなれば……。
ため息つきそうになるのをグッと堪えて、出された烏龍茶を飲み干してから大河と一緒に奥様に頭を下げた。
大河の表情から見ても分かる通り、練馬に来た事は無駄ではないけれど──…でも、手をあげて喜べるほどの有力情報も得られなかった、って所だ。
何か力になれればと思います、私は美咲の無事を…私だけじゃなく主人も妹も…全員が信じています。
そう、強く……だけど少し儚く言い切った奥様の期待に答える様に私と大河は玄関を出てからもう一度、頭を下げて警視庁から借りているスカイラインが停めてあるコインパーキングまで歩みを進めた。
