「では、早速色々と僕自身が気になる事を聞いていきたいと思います。」
「事件当日、不審な車や人物を見かけませんでしたか?」
「事件当日は何も見ていません。」
「私は買い物に出てて、美咲より先に家に着くつもりだったので彼女に鍵も預けていませんでしたし。」
「今よりは性能が低いけれど、あの時から警察署から届く不審者情報みたいなのもありましたけど……それでも❝危ないな❞と思った様な事例はありませんでした。」
「でも…」
「でも?」
大河の背中がピクリと動くと同時に、私がメモを取る手も一瞬だけ止まる。
「事件前日に、近くのファミリーマートでセンチュリーを見かけたんです。」
「センチュリー、ですか?」
「はい。ここら辺ってほら、練馬の奥地だし辺鄙な所でしょ?だから、高級車のセンチュリーなんて変だな、と思って見ていたからよく覚えています。」
「……。」
「カーテンがかかっていたので、中には会社の重役さんがいらっしゃったのかもしれないですけど。」
「その事、警察にはお伝えしました?」
「はい。警察の方から、ナンバープレートを確認してくれって言われたので。」
「そのナンバー、今も覚えてますか?」
「はい、勿論です。」
「東京3991でした。」
「……。」
センチュリーがここら辺に停まっていて、しかもカーテンが掛けられてあるなら余計住民の人の記憶には残るだろう。
ただ、その当時に警察も多少は調べているはずだし、そこで重要参考人としての記録が何一つ無い所も見ると、多分、乗車していた人は女子誘拐には関わっていない、と判断されたのだと思う。
