───2月8日。

町並みがお正月モードから一変、決算前セールモードになっていた。もう少ししたら春になる。


久本さんがオフィスに来てから2週間が経った。


私達は、この所ずっと二人で被害者家族に会って話を聞いているけれど有力な情報は何一つ得れないまま。

…このまま時だけが過ぎていくのか、なんて大河の幼馴染にしては弱気な思いが胸を過る。



「ったく、また俺のお袋がワケ分かんねえ写真を待ち受けにしたらしい。」


「ワケ分かんねえ写真?なにそれ?」


「これだよ、これ。」


と見せられたのは、いつかのあの日に私達がリビングのソファーでそのまま寝落ちしていた時に撮られたであろう写真。

大河は私の膝の上で、私は大河のお尻の上に頭を置いて二人とも見事に爆睡していた。


「出勤前に珈琲淹れようと降りてきた親父が撮ったんだと。…ったく、俺ら二人とももう26歳だってのに」

「まあ、良いじゃん。娘と息子が仲良しだなって微笑ましくて大河ママに送ったんでしょ。」


……あの日、大河にキスをされた日。

正直、かなりテンパっていたし一気に目の前の幼馴染が男に見えてどうすれば良いのか分からなかった。


でも大河は次の日も何時もと何も変わらない。

──そんな彼の態度を見て、きっと深い意味は無かったキスなんだから私も気にしないでおこう。と心に決め、今に至る。