「俺も今回の事件、神埼大河っていう名前なんかよりも一男として、一日本人として純粋に協力したいです。」
何かをジッと考えてから、彼にしては珍しく言葉を選びながらそう言い放った。
もう相当付き合いが長いであろう久本さんも、こんな真面目な彼をあんまり見た事が無いのか……それとももっとサイコパスっぽい反応を期待してたのか、ちょっと拍子抜けしていそう。
「…あっ、ああ。そう言ってくれると有り難いよ。」
「とりあえず、僕は今からホテルに帰って警視庁に連絡を入れるよ。多分、いつもの様に警視庁の方から大河君のパソコンに被害者情報が入ったPDFファイルが届くと思うから。」
「了解です。」
「謝礼は「謝礼の事は解決してから話しましょう。正直、国家間のパワーバランス系の事件だったら、たんまり頂きたいっすけど、この事件に関しては──オレの名にかけて、タダでも良い位です。」
腕時計をチラッと確認したら、もう8時。
かれこれ2時間も話し込んでいたのだとすると、久本さんがホテルに急ぐのは納得だ。
多分チェックインもしなきゃならないし、これから部屋で捜査情報も聞かないとダメだろうし。
「本当に……ありがとう、私達のシャーロック・ホームズ。」
なーんていうキザな言葉を最後に残して行った久本さんの背中を二人で見送った。
